ぶた      †  ブタがブタをぶった。  ぶたれたブタはぶったブタをぶった。  ぶったブタにぶたれたブタはぶったブタをぶったブタをぶった。  ぶったブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタはぶったブタをぶ ったブタをぶったブタをぶった。  ぶったブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタは ぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶった。  ぶったブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタに ぶたれたブタはぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブ タをぶった。  ぶったブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタに ぶたれたブタにぶたれたブタはぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶった ブタをぶったブタをぶったブタをぶった。  ぶったブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタに ぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタはぶったブタをぶったブタをぶっ たブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶった。  ぶったブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタに ぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタはぶったブタをぶ ったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタを ぶったブタをぶった。ぶったブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブ タにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブ タにぶたれたブタはぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶっ たブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶった。ぶった ブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれた ブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれた ブタはぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶっ たブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶった。ぶった ブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれた ブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれた ブタにぶたれたブタはぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶ ったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタを ぶったブタをぶった。ぶったブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブ タにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブ タにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタの右拳が、ぶ ったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタを ぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタ の左頬にめり込んだ。ぶったブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブ タにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブ タにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブタにぶたれたブ タの右拳は、ぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタ をぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブタをぶったブ タをぶったブタをぶったブタの左頬に食い込んだ。  見事なクロス・カウンター。  二匹は同時に力尽き、湿り気の残る川辺の赤土の上にどう、と倒れこんだ。  まるで絵に描いたように鮮やかな共倒れだった。 「……なかなかやるな」とブタがブタに言った。 「……お前もな」とブタはブタに答えた。  そして両者を居心地の悪くない沈黙が包んだ。  気がつけば、世界は夕暮れだった。  傾いた太陽を斜めに映し、川は熟れた杏の実のような橙色に染まっていた。  二匹のブタは川辺に尻尾を伸ばして転がり、消えていく夕日の輪郭を見送っ ていた。夜への準備を始めたばかりの空気が、痣だらけの体に微かに染みて、 彼らは顔をしかめる。  川向こうの高架を小豆色した電車が通り過ぎていく。  そういやあ、と二匹のブタは同時に考えた。  どちらが先に相手をぶったんだったっけ、と二匹のブタは同じことを考えた。 二匹はそれを、どうしても思い出すことができなかったが、なんだか、もう、 どうでもよかった。  夕焼けには憧憬があった。どこか遠くで踏み切りの警笛が鳴っていた。  陽がすっかり沈むまで、ぶったブタもぶたれたブタも、静かに川辺で傷を癒 した。 (That's all)